2012年05月27日

派遣労働者と派遣先団体交渉/派遣法40条と労組法7条2号

(1)労働者派遣法では,派遣労働者と派遣元である人材派遣会社の労働契約を締結するとき。派遣を前提とすること(同法32条1項),そして派遣労働者以外で採用した者に対し,派遣先に派遣就業として出す場合には,派遣就業の明示と本人同意を得ること。(同法32条2項)これらは一般の労働契約時の労働条件の明示(労基法15条)と同様の趣旨であるとともに,派遣労働者として雇用され,派遣先の派遣就業に従事することを本人同意のもとで実施する原則となります。労働者派遣法による派遣元雇用と派遣先使用の分離に伴う,通常の労働契約とは異なる部分の重要なポイントとなります。従って労働者派遣法では,派遣先で従事する労働を派遣労働とは言わず,派遣就業という用語により明確に分けています。これらは派遣先管理台帳(派遣法42条)にて,同1項3号「派遣就業をした日ごとの始業し,及び終業した時刻並びに休憩した時刻」を含め,同法42条3項により,派遣元の人材派遣会社に通知することになります。重要な点は実際に取得した,派遣就業日ごとの休憩時間を記録し,派遣元に通知すること。

(2)これらは通常の労働契約者では,当該事業場,工場,支店等の就業規則に記載してあります。しかしながら,派遣労働者の派遣先での派遣就業では,派遣元人材派遣会社は,日常の派遣就業の実労働時間を把握出来ない立場にあります。実労働である労働に従事した時間は,派遣就業日の派遣就業の始業終業時刻,そして実際に取得した休憩時間を,派遣先からの派遣元への通知により,初めて特定出来ることになります。派遣就業から,派遣に伴う労働時間を派遣元が算出出来ることになります。従って,派遣先就業規則通りとの主張や,派遣先のタイムカードによる代用の場合。始業終業時刻は打刻やIDカードによる記録は存在しても,実際に取得した休憩時間の記録はないことになります。それらは通常の労働契約では,就業規則通りであり,雇用と使用の一体企業では,休憩時間の日ごと記録は就業規則通りであり,実休憩時間についても当該企業は,日常管理出来ます。ところが派遣就業では,その原則が大きく崩れます。ひとえに雇用と使用の分離に伴う,特殊な派遣就業によるものと言えます。

(3)従って労働者派遣法では,派遣先で従事する労働を派遣労働とは言わず,また派遣元で算出する労働時間,賃金算定の基礎時間となる労働時間と派遣就業日の拘束時間を明確に分け,派遣元派遣先双方の時間管理の責任を明確にしていると言えます。労働当局の立入臨検時に,適正化の進んでいる企業の場合も,この部分が不徹底であることが指摘されることが多く出てきます。派遣労働者の雇用と使用の分離は,労働組合法7条2号の雇用関係にあるものとの団体交渉原則にも影響があります。端的には,雇用関係がない派遣先は,団体交渉の受認義務がないことがまずあります。雇用関係は派遣元人材遣会社となります。請負契約による朝日放送事件がありましたが,このケースでは請負契約でありながら発注会社構内にて放送局の指揮命令を受けていた場面。請負契約では指揮命令は出来ないにもかかわらず,行使されていたこと。従って,賃金等労働条件は請負会社であるが,日常の作業環境に関することについては,放送局発注会社が苦情処理として対応せよというのが,概要となります。

(4)派遣労働者・派遣社員の場合には,最初から指揮命令は派遣先にあるわけですので,偽装請負における発注会社からの違法なる指揮命令から一歩踏みだし,そもそも指揮命令があるのが常態,適正な姿である派遣就業。従って指揮命令という事実が適正に先行する点では,派遣就業時の団交問題はより,請負労働よりも発注会社は受認するための場に,近い環境にあると言えます。原則は受認義務がないにもかかわらず,派遣労働者への法的対応が不適正である場合。団交受認,応諾義務はより請負労働より,正当に拒否出来ないことに通じ,不当労働行為として派遣先が問われる場面は,請負契約の時よりも強くなると言えます。これら派遣労働者の団交要求を受けなくて良い形にするための,正当化要件の一つは,労働者派遣法40条の「適正な派遣就業の確保等」の遵守が重要となります。これは,団交要求受認義務等を回避出来る前提条件として,派遣労働者・派遣社員の苦情処理を派遣先企業は派遣元と連携し,対応せよということになります。この部分が派遣先で欠落し不十分対応となるとき。

(5)団交拒否は不当労働行為(労組法7条1号から4号)のうち特に2号に通じる場面が派遣先には出てきます。これは人事院勧告と公務員団結権問題と同様スタンスと言えます。派遣先にて苦情処理を受ける義務と責任は,派遣元と連携し適正対応する中で,派遣先が団交応諾,受認しない形とのバランスをとっていると言えます。派遣先の団交受認義務はこれにより,回避されるという意味に近いと言えます。従ってこれらの日常派遣労働者の派遣先企業による,苦情処理の対応不備は,派遣労働者の団交要求に対する正当な受認拒否となるとの主張が,派遣先企業は出来なくなる場面に通じる要素となります。労組法との関係を意識した派遣労働者・派遣社員管理の必要性は日常の派遣先の苦情処理問題との対応にあると言えます。労働者派遣法条項を労組法や労基法等の関連法との関係で捉えず,個々の条文を個別に受け止める形は,経営労務としては重大な欠陥対策に陥ります。派遣元に雇用関係があり,派遣先に使用関係がある,労働者派遣法40条においては,明確にこれらを明示しています。

(6)「派遣先は,その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し,苦情の申し出を受けたときは,当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに,当該派遣元事業主との密接な連携の下に,誠意を持って,遅滞なく,当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなくてはならない。」とあります。誠意をもってとは,形式的対応ではないこと。団体交渉時の重要項目が,ここにちらりと顔を出しています。朝日放送事件との絡みでは,労働者派遣法40条2項において,派遣先の就業環境の派遣労働者への便宜供与の対応や,必要な措置を求めます。派遣先企業の適正な派遣就業の確保のための事項となります。具体的には,同法40条2項にて「適正な就業環境の維持,診療所,給食施設等の施設であって現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるように努めなければならない。」とします。朝日放送事件の請負契約に関する司法判断と,労働者派遣法の苦情処理対応と派遣先,派遣元の責任義務は一致する形になっています。
posted by 一手ご指南 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする